
建設業を始める方、あるいは事業を拡大しようと考えている方にとって、「建設業許可」は避けて通れない重要な手続きです。しかし、一口に「建設業許可」と言っても、その中に「大臣許可」と「知事許可」という二つの大きな区分があることをご存じでしょうか?この違いを理解することは、事業計画を立てる上で非常に重要です。
今回は、建設業許可の基本から、この「大臣許可」と「知事許可」が具体的にどう違うのかを、わかりやすく解説していきます。
まずは建設業許可の基本を短くおさらい!
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負うために必要な許可のことです。
- どんな工事に必要?
- 建築一式工事の場合:1件の請負金額が1,500万円以上、または延べ面積150平方メートル以上の木造住宅工事
- 建築一式工事以外の場合:1件の請負金額が500万円以上
- これらの金額には消費税が含まれます。軽微な工事のみを請け負う場合は、必ずしも許可は必要ありません。
- 許可の有効期間:原則として5年間です。事業を継続する場合には、有効期間満了日の30日前までに更新申請を行う必要があります。
- 許可の種類:請負金額などによって「一般建設業」と「特定建設業」に分かれます。特定建設業は、元請として下請に出す金額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となる場合に必要です。
「知事許可」と「大臣許可」の決定的な違いとは?
いよいよ本題です。この二つの許可の区分は、主に「営業所の所在地」によって決まります。

1. 知事許可:一つの都道府県内で事業を行う場合
知事許可は、建設業を営むすべての営業所(本店や支店など)が「一つの都道府県内のみ」に所在する場合に必要となる許可です。
例えば、あなたの会社が愛知県内にのみ本店や支店といった営業所を置いて事業を行うのであれば、愛知県知事の許可を取得することになります。
- 申請先: 営業所を置く都道府県の知事
- 特徴: 事業展開を一つの都道府県に限定する場合にシンプルで分かりやすい許可です。
2. 大臣許可:二つ以上の都道府県にまたがって事業を行う場合
大臣許可は、建設業を営む営業所が「二つ以上の都道府県にまたがって」所在する場合に必要となる許可です。
例えば、本店を愛知県に置き、さらに静岡県にも支店を設けて事業を行うような場合、国土交通大臣の許可が必要となります。
- 申請先:
- かつては主たる営業所(本店)がある都道府県を経由して申請していましたが、2020年4月1日以降、国土交通大臣への申請は、直接地方整備局に郵送または持参することになりました。
- 例えば、愛知県に本店を置く場合であれば、国土交通省の各地方整備局(愛知県の場合は中部地方整備局)が申請先となります。
- 特徴: 事業を広範囲に展開する際に必須となる許可です。
ここでいう「営業所」って具体的にどんな場所?
「営業所」の定義は非常に重要です。単に登記上の本店や支店であればよいというわけではありません。
建設業法における「営業所」とは、継続的に建設工事の請負契約を締結する実体的な行為(見積もり、入札、契約締結など)を行う事務所を指します。 単なる連絡事務所や、登記上は本店でも実際には建設業に関する営業活動を行っていない場所は、「営業所」には該当しません。他の営業所に対して請負契約に関する指導監督を行うような場所も「営業所」に含まれることがあります。
会社の成長とともに必要になる「許可換え新規」
事業の規模や営業所の所在地が変わると、取得している許可の種類も変更する必要が出てきます。これを「許可換え新規」と呼びます。
「許可換え新規」は、あくまでも「新規」の申請として扱われます。これまでの許可がそのまま引き継がれるわけではないため、注意が必要です。
具体的なケースは以下の通りです。
- 知事許可から他の都道府県知事許可へ変更する場合:
- 例:愛知県知事許可を持っていたが、全ての営業所を静岡県に移転した場合、静岡県知事に対し新たに許可申請を行います。
- 大臣許可から都道府県知事許可へ変更する場合:
- 例:愛知県と静岡県に営業所を持つ大臣許可業者だったが、静岡県の営業所を廃止し、愛知県内のみで事業を行うことになった場合、愛知県知事に対し新たに許可申請を行います。
- 都道府県知事許可から大臣許可へ変更する場合:
- 例:愛知県知事許可を持っていたが、新たに静岡県に営業所を設置することになった場合、国土交通大臣に対し新たに許可申請を行います。
いずれのケースでも、新しい許可が下りた時点でそれまでの許可は失効します。
事業にとっての重要ポイント
- 事業の地理的範囲が許可の種類を決定します。 まずは、どの範囲で事業を行っていくのかを明確にすることが第一歩です。
- 大臣許可の申請先が変更されている点に注意しましょう。 2020年4月1日以降は、都道府県を経由せず、直接管轄の地方整備局へ申請します。
- 「営業所」の実体性を確保することが重要です。 見積もりや契約といった実質的な業務を行う場所でなければ、営業所とは認められません。
最後に
「大臣許可」と「知事許可」の違いは、建設業の営業所の所在地にあります。事業規模や展開エリアに応じて、適切な許可を取得することが、法令遵守はもちろん、円滑な事業運営の基盤となります。
具体的には、愛知県知事の建設業許可を得ている業者が、静岡県で工事を行うこと自体に問題はありません。
■ 知事許可の効力範囲
- 「知事許可(愛知県知事)」を受けている建設業者は、営業所が愛知県内にのみ存在することを前提としています。
- 施工現場の場所(静岡県など他県)に制限はなく、全国どこでも工事の受注・施工は可能です。
■ 県外工事における注意点
- 静岡県で恒常的に営業所を設けて営業活動を行う場合には、「国土交通大臣許可」が必要になります(2以上の都道府県に営業所があると大臣許可が必要)。
- 一時的な現場事務所(仮設事務所)は営業所にあたりませんので、これだけでは大臣許可は不要です。
もし、ご自身の事業がどちらの許可に該当するのか、あるいは将来的に許可換えが必要になるのかなど、具体的なケースでお悩みでしたら、ぜひ専門家である行政書士中村さつき事務所にご相談ください。お気軽にお問い合わせください。
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