建設業許可取得の鍵:財産的要件を徹底解説!

建設工事を適正に施工し、請負契約を履行するためには、十分な資金力と信用力が不可欠です。建設業法は、この「財産的基礎または金銭的信用」を許可取得のための重要な要件として定めています。この要件を満たしているかどうかが、許可取得の可否を左右すると言っても過言ではありません。

財産的要件の目的

財産的要件は、建設業者に適切な事業運営能力があることを確認し、契約の履行能力、ひいては発注者の保護を目的としています。万が一、経営状況が悪化しても工事を滞りなく完了できるだけの財産的裏付けがあるかを審査することで、建設業界全体の信頼性を保とうとするものです。

一般建設業と特定建設業で異なる要件

建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2つの区分があり、それぞれ求められる財産的要件が異なります。これは、特定建設業が大規模な下請契約を伴う元請工事を扱うため、より強固な財産的基礎が求められるためです。


1. 一般建設業における財産的要件

一般建設業の許可を受けるためには、申請時点で以下のいずれかの基準を満たしていることが必要です。倒産が明白な場合を除き、これらの基準に適合していれば要件を満たすものとされます。

基準1:自己資本の額が500万円以上であること

最も一般的な証明方法です。

  • 法人の場合:貸借対照表の「純資産の額」が500万円以上である必要があります。
    • 新規設立の法人の場合、「開始貸借対照表」で確認されます。
    • 1期目以降の決算を終了し確定申告期限を経過している場合は、直前の決算期における財務諸表(法人税の確定申告書別表一、決算報告書)で確認されます。税務署の受付印(令和7年以降の申告分は不要だが、電子申告の場合は受信通知も確認)が必須です。
  • 個人事業主の場合:貸借対照表の「期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額」が500万円以上である必要があります。
    • 新規設立の個人事業主の場合、「開始貸借対照表」に加え、後述の金融機関の預金残高証明書(基準2)の提出も必要です。
    • 1期目以降の決算を終了し確定申告期限を経過している場合は、直前の決算期における財務諸表(所得税の確定申告書第一表・第二表、青色申告決算書または収支内訳書、貸借対照表)で確認されます。こちらも税務署の受付印または受信通知が必須です。

ポイント: 特に設立から間もない会社の場合、決算で赤字が出てしまうと、資本金が500万円以上あったとしても自己資本の額が500万円未満になってしまうことがあります。このようなケースは少なくありません。

基準2:金融機関の預金残高証明書で500万円以上の資金調達能力を証明できること

基準1の自己資本額が500万円に満たない場合に用いられる方法です。

  • 金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書を提出します。
  • 重要ポイント: この残高証明書は、「残高日」が申請日前4週間(28日)以内のものである必要があります。発行日ではないことに注意が必要です。
    • 実務上の注意として、例えば月末に支払いが集中し残高が減ってしまう企業の場合、月末を避けて残高が一時的に500万円を超えている日(例:入金があった日など)を指定して、その日の残高証明書を発行してもらうことが可能です。この「日付指定」を的確に行うことが、スムーズな申請の鍵となります。
    • 万が一、申請準備中に証明書の期限が切れてしまうと、再取得の手間が発生し、場合によってはその期間中に残高が500万円を下回ってしまう可能性もあるため、残高証明書の取得タイミングと有効期限の管理は非常に慎重に行う必要があります。

基準3:許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

  • これは、5年目の更新申請者に適用される基準です。既に5年間建設業許可を受けて継続して営業している事業者は、この財産的要件を自動的に満たすとみなされます。
  • ただし、許可の有効期間が過ぎてしまった場合は、更新申請ではなく新規申請となるため、この基準は適用されず、基準1または2を満たす必要があります。

2. 特定建設業における財産的要件

特定建設業の許可は、元請として1件の工事につき5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)の金額を下請人に施工させる場合に必要となります。そのため、一般建設業よりも厳しい財産的基礎が求められ、原則として以下の4つの基準すべてを満たす必要があります。

原則として、許可申請時の直前の決算期における財務諸表(法人税の確定申告書別表一、決算報告書、貸借対照表など)において、以下のすべてに該当することが求められます。

基準1:欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

  • 欠損の額とは、法人では貸借対照表の「繰越利益剰余金」がマイナス(負)である場合、その額が「資本剰余金、利益準備金及び任意積立金」の合計額を上回る額を指します。個人では「事業主損失」が特定の合計額を上回る額です。

基準2:流動比率が75%以上であること

  • 流動比率とは、「流動資産」を「流動負債」で除して得た数値を百分率で表したものです。流動比率が高いほど短期的な支払い能力が高いと判断されます。

基準3:資本金の額が2,000万円以上であること

  • 資本金の額は、法人では株式会社の「払込資本金」や持分会社の「出資金額」、個人では「期首資本金」を指します。
  • 増資による特例: 申請時直前の決算期ではこの基準を満たさない場合でも、申請日までに増資を行い、その増資によって資本金の額が2,000万円以上になれば、この基準は満たしているとみなされます。ただし、後述の自己資本の額は財務諸表で基準を満たす必要があります。

基準4:自己資本の額が4,000万円以上であること

  • 自己資本の額は、法人では貸借対照表の「純資産の額」、個人では「期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額」を指します。

行政書士が指摘、実務上のヒント

「その他の建設工事の施工金額」欄の活用

決算変更届の提出は単なる義務ではありません。当事務所のような建設業専門の行政書士は、この書類作成にも「プロの技」を盛り込みます。特に「直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)」の「その他の建設工事の施工金額」欄への記入は、将来の事業拡大に繋がる重要なポイントです。

この欄に、許可を受けていない建設工事の施工金額をきちんと計上しておくことで、10年後に「実務経験10年」として新たな建設業許可業種を追加できる可能性が生まれます。もしこの欄が0のままでは、将来的に実務経験による業種追加が不可能になってしまうため、多忙な中でも細かく記載することが、貴社の将来の受注増に繋がります。これは、単なる数字の記入にとどまらない、将来を見据えた戦略的な会計処理と言えるでしょう。

残高証明書の「日付指定」の重要性

前述の通り、一般建設業の財産的要件を預金残高証明書で証明する場合、「残高日」が申請日前4週間以内であることが求められます。顧客から「残高証明書」を依頼された際には、単純に発行してもらうのではなく、残高が最も多かった日付(例えば、月の特定の入金日など)を指定して発行してもらうよう指示することで、確実に要件を満たせる可能性が高まります。これは、行政書士が実務で培った、お客様を助けるための具体的なノウハウです。


まとめ

建設業許可の財産的要件は、一般建設業と特定建設業で大きく異なります。

  • 一般建設業では、「自己資本500万円以上」または「500万円以上の資金調達能力(預金残高証明書など)」のいずれかを満たす必要があります。
  • 特定建設業では、「欠損の額が資本金の20%以下」「流動比率75%以上」「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」のすべてを満たす必要があります。

これらの要件を満たすためには、正確な会計処理と、適切な書類準備が不可欠です。特に、決算書の数字が要件に満たない場合や、複数の業種展開を見据えている場合は、専門的な知識と経験を持つ行政書士のサポートが強力な味方となります。

建設業許可に関するご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお寄せください。私たちは、建設業のみなさまの事業の成長を財産面の観点からも力強くサポートいたします。

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中村さつき
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